海藻飼料は万能ではない――抗菌抽出物とAsparagopsisのメタン削減を分けて読む

環境・気候

海藻を畜産へ使う研究には、少なくとも二つのかなり違う流れがあります。

一つは褐藻 Ascophyllum nodosum や緑藻 Ulva lactuca などから抽出物を作り、抗菌・抗酸化活性を調べる研究。もう一つは紅藻 Asparagopsis が含むbromoformを利用し、反芻動物の腸内メタン生成を抑える飼料添加研究です。

旧版の記事は、この二つを同じ論文が「家畜で実証した」ように混ぜていました。リンクしていた2024年 Scientific Reports 論文 s41598-024-71961-8 は、実際には海藻抽出物のin vitro抗菌・抗酸化試験であり、牛や豚へ飼料として与えた試験ではありません。

まず訂正:2024年論文は家畜飼養試験ではない

この研究は複数海藻由来抽出物の抗菌・抗酸化活性を測った材料スクリーニングです。培地上で病原菌を抑えたり化学アッセイで抗酸化能を示した結果から、「家畜へ食べさせれば感染症が減り、肉質が上がる」と直接結論することはできません。

メタン削減で中心になるのはAsparagopsisとbromoform

海藻の写真
海藻は種ごとに含有成分と飼料機能が大きく異なる。

反芻動物のメタン削減で特に注目されるのは紅藻 Asparagopsis taxiformis / A. armata です。含有するbromoformがルーメン内のmethanogenesisを強く阻害します。

2025年のJournal of Dairy Scienceメタ解析は14研究、39 treatment mean differencesを統合しました。平均bromoform dose約28.3 mg/kg DMでは、メタンproductionが47.3%、yieldが43.3%、product当たりintensityが39.0%低下すると推定されました。

ただし採食量と乳量も下がった

同じメタ解析では、平均doseでDMI(乾物摂取量)が乳牛6.45%、肉牛3.26%低下し、乳牛のmilk yieldは4.60%低下しました。効果は牛のタイプ、飼料中デンプン/NDF、bromoform doseで変わります。

「メタンだけを減らして生産性には影響しない」と一括りにはできません。

2026年乳牛試験では、保存中のbromoform低下も問題になった

2026年のJournal of Dairy Science研究はHolstein 18頭へ0.50%または0.75% A. taxiformis を給与しました。日メタン排出は最大30%低下しましたが、DMIは最大22%低下し、energy-corrected milkも最大14%低下しました。

研究では長期保存した海藻中のbromoform濃度・安定性も課題となり、メタン抑制効果が時間とともに変わり得ることが示されています。

海藻種が違えば機能もリスクも違う

AscophyllumやUlvaのポリフェノール・多糖・抗酸化成分研究と、Asparagopsisのbromoform研究は同じ「海藻」でも作用機構が違います。Asparagopsisではbromoform曝露、残留、安全性、海藻生産のスケール、品質規格が実用化上の重要課題です。

さらに環境評価には、海藻養殖、乾燥・加工、輸送、飼料への混合に使うエネルギーも含める必要があります。「海藻はCO2を吸うから飼料にすれば自動的に低炭素」という計算にはなりません。

2026年の評価:強いメタン削減技術だが、doseと生産性のバランスが鍵

Asparagopsis/bromoformは反芻家畜メタンを大きく減らせる再現性のある候補です。一方、用量を上げれば採食量・乳生産が落ちる条件があり、飼料組成や製品品質によって効果も変動します。

実用化では「最大削減率」ではなく、メタン削減量、動物生産性、bromoform dose、安全性、コストを同時に最適化することが重要です。

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参考文献

  • Assessment of the antibacterial and antioxidant activities of seaweed-derived extracts. Scientific Reports. 2024. https://doi.org/10.1038/s41598-024-71961-8
  • van Gastelen S et al. A meta-analysis of effects of seaweed and other bromoform-containing feed ingredients on methane production, yield, and intensity in cattle. Journal of Dairy Science. 2025;108:11071–11093. https://doi.org/10.3168/jds.2025-26960
  • The macroalga Asparagopsis taxiformis decreases dry matter intake and milk production in dairy cows. Journal of Dairy Science. 2026;109:3914–3927. https://doi.org/10.3168/jds.2025-27377

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