「木を植えれば冷える」はどこで崩れる?――172件のカーボンクレジットをalbedoまで計算した結果

環境・気候

植林・再植林は大気中CO2を取り込みます。しかし気候への影響は炭素だけでは決まりません。明るい草地や積雪面を暗い樹冠へ変えると、太陽光をより吸収してalbedo(反射率)による暖化効果が生じる場合があります。

2024年の Nature Communications 研究は世界のtree-cover restorationについて炭素吸収とalbedo変化を同じCO2-equivalent尺度へ変換し、2025年の続報は実際のVoluntary Carbon Market(VCM)の172件のAfforestation, Reforestation and Revegetation(ARR)projectを評価しました。

結果は「植林は悪い」ではありません。場所を選ばず炭素だけでcreditingすると、気候便益を大きく過大評価するprojectがあるという話です。

albedoは地表が太陽光をどれだけ反射するか

森林は多くの場合、草地や裸地、積雪面より暗く、短波放射を多く吸収します。この吸収増加は正のradiative forcing、つまり暖化方向へ働きます。

一方、樹木はCO2を固定し、蒸発散や雲形成などを通じて局地気候にも影響します。2024/2025研究が定量化した中心は炭素便益に対するalbedoの放射効果であり、「森林が熱を蓄えて夜に放熱しない」という単純な比熱モデルではありません。

2024年研究:気候positiveな場所を地図化

植林された土地のイメージ
tree-cover restorationの気候効果は場所と元の土地被覆で変わる。

Haslerらは、草地・農地などから森林への24種類のland-cover transitionについて、炭素固定とalbedo changeを100年スケールのradiative forcingで比較しました。

熱帯などでは炭素吸収の便益が大きくalbedo penaltyが比較的小さい場所が多い一方、雪のある高緯度や乾燥・明色地表ではalbedo低下の影響が大きくなり得ます。

そのため植林面積を最大化するより、net climate benefitが高い場所を優先する方が合理的です。

2025年:172件の実在VCM projectを評価

続報は5大陸の172 ARR projectを集め、projectが予定するcarbon credit量と500 m resolutionのalbedo datasetを重ねました。これらprojectは今後100年で約8億t-CO2eの気候便益を申告していました。

ところが、使われていた5つのregistry standard/protocolはいずれもalbedo changeをcredit量へ組み込んでいませんでした。

median deductionは18%、25%で半分以上を相殺

植林後のalbedo低下による気候効果を示す図
植林によるsurface albedo低下は、CO2固定による冷却便益の一部または全部を相殺し得る。出典: https://doi.org/10.1038/s41467-025-64317-x

172件全体のmedian albedo deductionは18%でした。

  • 25%のproject:albedoでCO2便益の50%以上が相殺される推定
  • 12%のproject:albedoでCO2便益が100%以上相殺される推定
  • 9%のproject:albedoが逆に追加の冷却benefitを与える推定

特に重要なのは、「18%のprojectが過大評価」ではなくmedian projectで18% deductionという点です。旧版の記述をここで訂正します。

21 projectはnet warmingになり得るという推定

100% deduction thresholdを置くと21件(12%)が不適格となり、それらはprojected credit全体の30%を占めました。50% thresholdなら43件(25%)が不適格となり、projected creditの39.1%が対象になります。

これはprojectそのものの炭素吸収量が虚偽という意味ではありません。炭素固定は起きても、反射率変化によるradiative forcingを加えるとnet climate effectが小さくなるという指摘です。

albedoだけでも終わらない

森林は蒸発散、粗度、雲、火災リスク、生物多様性、水循環にも影響します。2024研究もfull net climate impactにはalbedo以外のbiophysical effectを含める必要があると明記しています。

カーボンクレジットの改良は「CO2 − albedo」という単純な一行計算で完結するのではなく、まずalbedoを無視しない会計へ進み、その後さらに地域ごとのbiophysical effectを高解像度化する方向です。

「植えない方がよい」ではなく「適地を選ぶ」

森林再生には炭素、生物多様性、水源、土壌保全など多くの便益があります。研究の主張は植林中止ではなく、気候緩和目的のprojectなら、同じ資金・同じ面積でもnet coolingが大きい場所を優先すべきというものです。

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参考文献

  • Hasler N et al. Accounting for albedo change to identify climate-positive tree cover restoration. Nature Communications. 2024;15:2275. https://doi.org/10.1038/s41467-024-46577-1
  • Reed V et al. Accounting for albedo in carbon market protocols. Nature Communications. 2025. https://doi.org/10.1038/s41467-025-64317-x

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