赤い雪をつくるSanguina nivaloides――培養できない雪藻を3D細胞解析した

生態・進化

高山や極地で雪面が赤く染まる「赤雪」の主要な原因の一つが、単細胞緑藻 Sanguina nivaloides の赤いcystです。2023年の Nature Communications 研究は、培養できないこの雪藻を環境試料から直接採取し、X-ray tomographyやFIB-SEMなどを使って3D細胞構造を解析しました。

雪の中で暮らしているのは赤いcyst

赤雪を形成するSanguina nivaloidesのcyst
Sanguina nivaloidesは赤いcystとして雪面に高密度で現れる。

S. nivaloides は現在も標準的な培養系が確立していません。研究者らは雪面からcystを採取し、氷粒子の周辺にある液体水の薄い領域に細胞が存在することを示しました。

cystは光合成活性を保ち、数か月生存できる一方、凍結そのものには敏感でした。「寒さに強い=凍っても平気」ではなく、凍結しにくい微小環境を利用していると考えられます。

しわの多い細胞膜が環境との接触面積を増やす

Sanguina nivaloides cystの3D細胞構造
3D imagingにより雪上環境へ適応した細胞内構造が可視化された。

3D解析ではplasma membraneが強くwrinkledしており、外界とのinterfaceが大きくなっていました。ionomicsではK+の排出とPの取り込みを支持する結果が得られ、glycerolipid解析からはphosphate limitationも示されました。

葉緑体は方向を問わず光を受けるような構造

chloroplast内のthylakoidは多方向へ配向し、中央のpyrenoidでcarbon fixationを行い、周辺部にstarchを蓄積していました。暗条件ではstarchが短期のcarbon storageとして使われることも示されました。

赤色の脂質滴は長期貯蔵と酸化ストレス対策

cytosolic lipid dropletsにはtriacylglycerolとcarotenoidが蓄積していました。これは長期的なcarbon storageに加え、強光・紫外線などで生じるoxidative stressから細胞を守る仕組みと考えられます。

赤い色は単なる景観ではなく、雪上という強光・低温・栄養制限環境に適応した細胞状態の一部です。

2026年時点でもcryosphere algae研究は拡大中

その後も氷河・雪上藻類のsingle-cell ionomicsやmetaproteomicsなど、cryosphere algaeを細胞レベルで調べる研究が進んでいます。ただし、本論文のS. nivaloides cystの生理をそのまま他の氷河藻類へ一般化することはできません。

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参考文献

  • Ezzedine JA et al. Adaptive traits of cysts of the snow alga Sanguina nivaloides unveiled by 3D subcellular imaging. Nature Communications. 2023;14:7500. https://doi.org/10.1038/s41467-023-43030-7

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