コケを6〜10Gで育てると光合成が増えた――IBSH1/AP2-ERFがつなぐ高重力応答

植物生理・発生

重力を通常より強くすると植物の光合成はどう変わるのか。2025年の Science Advances 研究はモデルコケ Physcomitrium patensを1、3、6、10Gで長期栽培し、canopy photosynthesis、CO₂ diffusion、形態、transcriptomeを解析しました。

6G・10Gでcanopy photosynthesisが36〜52%増加

3Gでは有意な増加が見られませんでしたが、6Gと10Gではcanopy-based photosynthesisが36〜52%、CO₂ diffusional conductanceが35〜56%増加しました。

chloroplast sizeとgametophore numberの増加がcanopy-level CO₂ diffusionを高め、その結果photosynthesisが増えたと解析されています。

AP2/ERF転写因子IBSH1がresponseを再現

10Gでは複数のmoss-specific AP2/ERF transcription factorがup-regulateされました。その1つPp3c1_32440をoverexpressすると、1Gでもchloroplast enlargement、gametophore growth、photosynthesis increaseなど10G phenotypeの多くを再現しました。

研究者らはこのgeneをISSUNBOSHI1(IBSH1)と命名しました。dominant repressor formでは10G responseが抑えられ、mechanistic involvementを支持しています。

「高重力へ適応して進化した」と断定しない

論文はAP2/ERF expansionがland-plant adaptationへ関与した可能性を議論していますが、今回直接実験したのは現生P. patensのhypergravity responseです。

6〜10G responseが“陸上進出時の重力適応そのもの”だったと直接証明したわけではありません。進化的解釈はhypothesisとして扱う必要があります。

作物の光合成増強へそのまま転用できるわけでもない

IBSH1はmoss-specific AP2/ERF networkの一部です。被子植物で同じgene manipulationをすればphotosynthesisが増えるとは限りません。

この研究の価値は、通常ほぼ一定なgravityというenvironmental factorが、形態→CO₂ diffusion→photosynthesisへつながる具体的networkを示した点にあります。

関連するテーマとして、月の土で植物を育てた、ではない――月レゴリス模擬土をリン溶解菌で改良した研究もあわせて読むと背景がつながります。

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参考文献

  • Hanba YT et al. First contact with greater gravity: Moss plants adapted via enhanced photosynthesis mediated by AP2/ERF transcription factors. Science Advances. 2025;11:eado8664. https://doi.org/10.1126/sciadv.ado8664

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