ムラサキカタバミの花を肉眼で見ると、淡い桃紫色の花弁に、中心から外側へ伸びる濃い紫色の筋が見えます。では、この模様は細胞レベルではどう見えるのでしょうか。
今回は自分で採取した花弁を段階的に拡大した観察記録です。論文実験ではないので、写真から直接言えることと、色素研究から推測できることを分けて見ます。
肉眼の筋模様を拡大すると



低倍率では、花弁の濃い筋が1本の線として塗られているのではなく、色の濃い領域が細胞の並びに沿って続いていることが分かります。
花弁全体は同じ紫ではなく、淡色の細胞群と濃色の細胞群が空間的に配置され、その差が肉眼で見える模様になります。
高倍率では「色の濃い細胞」と「薄い細胞」が並ぶ






さらに拡大すると、花弁表皮の細胞輪郭と色の違いがはっきりします。濃い筋の部分では赤紫〜紫色の強い細胞が多く、周辺ではより淡い細胞が並びます。
一部はgradientのように見えますが、肉眼のpatternは最終的に個々の細胞のpigmentation差の集合として作られていることが観察できます。
写真だけで色素をanthocyaninと断定しない









花弁の赤・紫・青色にはanthocyaninが広く関与し、多くの場合vacuoleへ蓄積します。花色の濃淡はanthocyanin量だけでなく、種類、vacuolar pH、copigment、細胞形状などでも変わります。
ただし今回の写真だけでは、ムラサキカタバミの濃い細胞に何のanthocyaninがあるか、あるいはanthocyanin以外の要因がどの程度寄与するかは決められません。化学同定にはextract、spectroscopy、chromatography、mass spectrometryなどが必要です。
「模様」は細胞ごとのgene expressionの結果として現れる
花弁模様は、色素biosynthesis geneやtranscription factorが場所ごとに異なるactivityを示すことで作られる場合があります。最終的に顕微鏡で見える「濃い細胞/薄い細胞」の差は、その細胞がどの色素をどれだけ合成・輸送・蓄積したかというdevelopmental programの結果です。
今回の観察だけでムラサキカタバミのpatterning geneを特定することはできませんが、肉眼の花模様が細胞レベルのspatial patternへ分解できることはよく分かります。
以前紹介したカタバミ研究とは別の話
以前紹介したpost 495は Oxalis corniculata のgreen/red leaf polymorphismとurban heat adaptationの研究です。今回のムラサキカタバミの花弁模様とは、speciesもorganも現象も異なります。
内部リンク整理は全125記事リマスター後に行いますが、最終的には「カタバミ属の色」「葉色」「花色」「顕微鏡観察」という別レイヤーの記事として接続できます。
顕微鏡で見ると花は「細胞のモザイク」になる
肉眼では一枚の花弁に見えても、拡大すると模様は一つ一つの細胞の色の違いへ分解されます。
身近な花を拡大するだけでも、花色が“塗料”ではなく、細胞ごとの代謝と発生制御で作られていることが見えてきます。
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参考文献
- Grotewold E. The genetics and biochemistry of floral pigments. Annual Review of Plant Biology. 2006;57:761–780.
- Plant anthocyanins: classification, biosynthesis, regulation, bioactivity, and health benefits. Plant Physiology and Biochemistry. 2024;217:109268. https://doi.org/10.1016/j.plaphy.2024.109268


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