鏡像花はどう作られる?――花粉を昆虫の左右へ載せ分けるsupergeneと重力

左右に反転したWachendorfia paniculataの花と、体の左右に花粉を付着させた送粉昆虫を示す概念図 生態・進化
Wachendorfia paniculataの左右の花型と花粉輸送を示す概念図。花粉の青と赤は経路を区別する模式表現です。

南アフリカのbutterfly lily、Wachendorfia属には、雌しべが左へ曲がる花と右へ曲がる花が同じ集団に存在します。2026年7月30日にScienceで査読版が公開された研究は、このdimorphic enantiostylyを、遺伝子だけではなく重力を外部座標として使う発生現象として解き明かしました。

左右型は花粉をpollinatorの別の場所へ載せる

左型と右型では、雌しべと主要な雄しべが互いに反対側へ配置されます。そのため訪花昆虫の体の左右で、花粉を付ける位置と柱頭が触れる位置が対応します。これは雄機能と雌機能の干渉を減らし、反対型間のcross-pollinationを促す仕組みです。

右型だけが持つhemizygous supergene

研究チームは右型に特異的なR locusを同定しました。これは単一遺伝子ではなく、複数の形質を一緒に受け継がせるhemizygous supergeneです。主要な候補causal lociは、雌しべ側に関わるMIR156-Rと、雄しべ側に関わるYUCCA-R(YUC-R)でした。

自然欠失個体、器官別発現、auxin量などの証拠は、2つの因子が雌雄器官の反対向き配置を協調して作ることを支持します。Wachendorfiaで安定した形質転換による直接ノックアウトを行った研究ではないため、証拠の種類も併記して読むのが適切です。

遺伝子だけでは左右差は完成しない

つぼみを上下逆さまにしたりclinostatで重力刺激を平均化した実験から、器官の最終的な左右方向は、内在するchiralityとgravitropismの組み合わせで作られることが示されました。つまり花は自身の固定された背腹軸だけではなく、重力という外部基準を利用しています。

preprintではなくScience VORを基準にする

旧版では2025年bioRxiv版も併記していましたが、現在の基準文献は2026年7月30日公開のScience査読版です。査読版の要点は、MIR156-RとYUCCA-Rを含むsupergene、遺伝的chirality+gravitropism、pollinator上でのallele-specific pollen placementが一つの進化システムとしてつながったことです。

関連するテーマとして、朝は雌、午後は雄――アボカドの開花時計を支えるSDMYBと4400万年以上の多型もあわせて読むと背景がつながります。

関連するテーマとして、メスバチを真似るOphrys sphegodesの巨大genome――性擬態の香りgene duplicationとLTR burstもあわせて読むと背景がつながります。

関連するテーマとして、イネの花が開く時刻を決めるOsMYB8――インディカ×ジャポニカ交雑種子づくりの壁を下げるもあわせて読むと背景がつながります。

参考文献

  • Xue H et al. Supergene control of chiral development in mirror-image flowers. Science. 2026;393(6810):eaeb1157. https://doi.org/10.1126/science.aeb1157

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