からし菜から作るナチュラル除草剤。Biofumigationの可能性。

研究
植物のアレロパシーによるバイオ燻蒸(Biofumigation)

バイオ燻蒸(Biofumigation:Bio=生物、Fumigation=燻蒸消毒)を知っていますか?「バイオ燻蒸」は、植物が持つ自然の化学物質を使って土壌中の病害虫や雑草を抑制する方法です。従来の化学除草剤に代わる環境に優しいアプローチとして注目されています。特に、植物の持つ「アレロパシー」の効果は自然な雑草抑制剤として期待されています。アレロパシーとは、ある植物が他の植物の成長を抑制する現象です。本研究では、韓国で育てられた8種類の「からし菜」の品種について、そのアレロパシー効果を検証し、どの品種が最も強力な雑草抑制効果を持つかを明らかにすることを目的としています。からし菜は日本でも食べられますが、辛味の成分はアリルイソチオシアネートという物質で、これがアレロパシー効果の主要因と考えられています。

引用文献:Turning glucosinolate into allelopathic fate: investigating allyl isothiocyanate variability and nitrile formation in eco-friendly Brassica juncea from South Korea

からし菜のアレロパシー効果を検証してみた

この研究では、韓国で育種された8つの葉からし菜品種を用いてアレロパシー効果を調査しました。まずは、レタス種子を使用したアレロパシー生物検定が行われました。レタスの種子を寒天培地の上に撒きます。その種子から少し離れた位置に、からし菜粉末が添加されました。ここで使われているからし菜の粉末は、からし菜の各品種の葉を収穫して凍結乾燥させて粉末状にしたものです。粉末を添加した状態で、レタスの種をしばらく栽培して発芽率と初期成長を観察し、からし菜のどの品種が最も強力なアレロパシー効果を持つかを評価しました。

https://www.nature.com/articles/s41598-024-65938-w

実験の結果、「Nuttongii」と呼ばれるからし菜品種の粉末は、レタスの発芽率と初期成長を著しく抑制しました。Nuttongii種のアリルイソチオシアネート濃度を測定したところ、他の品種よりも高い濃度で含まれていることがわかり、やはり、アリルイソチオシアネートがアレロパシーの重要な要素であることが推測されます。試験では、レタスの発芽率が50%以上低下して、初期成長も大幅に遅れたことから、からし菜成分を有効活用することで、バイオ燻蒸を実現できます。

https://www.nature.com/articles/s41598-024-65938-w
新規Biofumigation剤の可能性

この試験の結果は、新しいバイオ燻蒸剤の開発に大きな可能性を示しています。持続可能な農業の実現にも貢献できるでしょう。例えば、からし菜を栽培した後にそのまま畑に鋤き込んだり、収穫して乾燥物を土地に撒いたり。様々な使い方が考えられますが、いずれも化学除草剤に頼らない効果的な雑草管理に繋がります。元々が植物由来であることから、環境負荷を大幅に減らしつつ、最終的に自然に分解されることで土地へのダメージも最小限です。

一方で、化学物質ベースの除草剤ほど顕著に効果が現れないかもしれません。しかし、使い分けの手法が増えたことが重要です。確実に効かせたい場合は化学物質を使いつつ、環境負荷を控えたい場合はバイオ燻蒸を行うなど、多様な対策が取れるということは、畑だけでなく農業従事者への化学物質暴露が減り健康面への恩恵も期待できます。これからの農業は自然だけでなく「人」へも「低負荷」であるべきと考えます。バイオ燻蒸の研究開発に期待ですね!

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