寒くなってきたので、辛いものを食べて温ま理たくなります。辛さにも種類はありますが、基本的には唐辛子のような「カプサイシン」を含む香辛料を使う場合がほとんどですよね。人類は辛いものが大好きで、たくさんの美味しい料理を生み出してきましたが、野生動物はどうなのか、気になりませんか?植物のカプサイシン戦略は動物の進化をも変えています。
Molecular mechanism of the tree shrew’s insensitivity to spiciness
哺乳類ではカプサイシンを忌避しないのは一部。
ツパイという動物をご存知でしょうか。和名では「登木目」と呼ばれる分類で、見た目はリスのようですが、進化系統は別となる、霊長類に近縁の種です。このツパイは、他の哺乳類とは異なり辛い食物を摂取できる特異な動物です。一般的に哺乳類は辛味を感じると不快感を覚えますが、ツパイはカプサイシン類に対して低い感受性を示し、辛い植物を直接食べることができます。
ツパイはTRPV1イオンチャネルの遺伝子に特有の変異を持っており、これがカプサイシノイドへの感受性を著しく下げることが明らかになりました。この変異は、ツパイが辛い植物を食べることを可能にし、食物の選択肢を広げる進化的適応であると考えられます。
ツパイアのこの遺伝的特性は、特定の辛い植物(Piper boehmeriaefolium)との地理的重複によって進化的圧力がかかった結果と推測されます。この植物は、カプサイシノイドに似た化学物質を含み、ツパイアはこの植物を好んで食べる傾向がありました。この変異は、食物の種類を増やすことによって生存の適応を高めるものと考えられます。
鳥類は辛味なんてへっちゃら。
哺乳類の大部分がカプサイシンを忌避するのに対し、鳥類は問題なく摂食できます。鳥類がカプサイシンに対して感受性が低いことは、彼らのTRPV1チャネルにおける特定の2つの点変異によるものです。この適応は鳥類の食事範囲を広げるだけでなく、植物にとっても利点があります。鳥類によって広範囲に種が分散されることで、植物の生存と繁殖が促進されるのです。この現象は、植物と鳥類の共進化の一例と考えられます。植物は辛味を持つことで多くの哺乳類を遠ざける一方で、鳥類には影響を与えず、種の分散を助けます。これにより、鳥類は辛味を持つ植物を食べ、その種子を広範囲に運ぶことができるようになり、植物は鳥類を利用して種子を広く拡散することが可能になります。素晴らしき相互利益。
植物由来辛味成分の商用活用の可能性
カプサイシンの活用例の研究を調べるといくつか見つかってきました。主に家畜類に与えることで、健康状態を改善し、免疫機能や肉質を良くするというテーマが多いです。 Single components of botanicals and nature-identical compounds as a non-antibiotic strategy to ameliorate health status and improve performance in poultry and pigs Hot red pepper powder as a safe alternative to antibiotics in organic poultry feed: an updated review 特に鳥類(ブロイラーなど)では、抗生物質の代替として研究されていますね。自然物で代替できるのであれば、抗生物質の悪影響を軽減できる可能性があり、食欲増進や肉質も改善できれば尚良しですが、今後の研究に期待です。 昔から唐辛子を米びつに入れる、など虫の忌避も確認できますので、食べる以外にも唐辛子類の活用の幅はありそうですね。
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