モリンガの葉から抽出したエキスが歯の再石灰化を促進した。知覚過敏の救世主か?!

研究
モリンガの葉

モリンガと呼ばれる植物をご存じですか?和名はワサビノキと言います。インドが最大の生産国ですが、フィリピンでも栽培され、昔フィリピン人の友人に「マルンガイ(フィリピンでの呼び名)の葉をあげるから食べてみて」と言われスープにして食べたことがあります。特に癖もなく、野菜感覚で食べれました。このワサビノキは栄養豊富な植物で、発展途上国では栄養不良を改善するために流通しているとのことでした。今回みつけた報告では、このモリンガの葉から抽出したエキスが歯の再石灰化に有効だとされていました。新たなた使い道となるのでしょうか。

Dentinomimetics and cementomimetics of Moringa oleifera leaves extract

モリンガの基礎知識

冒頭にも記しましたが、とても栄養豊富なマメ科の植物です。β-カロテン、ビタミンC、多くのミネラル (乾燥量 2185 mg/100 gで牛乳よりも多い) など、多くの有益な要素が豊富に含まれます。葉には、リン(乾燥葉で252 mg/100 g)、カリウム(乾燥葉で1236 mg/100 g)3 、および薬用に必須の天然化合物も豊富です。また、タンパク質は卵よりも多く、鉄分はほうれん草よりも多く、ビタミンAはニンジンよりも多く、カロテノイド、フラボノイド、フェノールも豊富に含まれています。葉の抽出物を分析したところ、フェニルアラニン、トリプトファンなどの15種類のアミノ酸と、ヒスチジン、プロリン、グリシン、アルギニン、セリン、システイン、アスパラギン酸などの非必須アミノ酸が含まれていることが判明しました。さらに、葉にはビタミンB複合体、銅、カリウム、亜鉛、シリカ、マグネシウム、マンガン、オメガ脂肪酸が含まれています。 前述のすべての要素を加味すると、ヒトの硬組織におけるさまざまな再石灰化プロセスが促進される可能性があるそうです。これを着眼点とし、今回の報告で歯の再石灰化プロセスに影響するか研究されていました。

モリンガの粉末

削った歯にモリンガエキスを塗ったら歯の再石灰化が進んだ。

歯科矯正治療中に抜歯された歯が試験に使われていました。試験のために歯のかみ合わせ部分の一部を3mmほど削った歯になります。ここに、モリンガの葉から抽出したエキスを歯科用樹脂(ワニス)と混ぜて、歯に塗布しています。対照区として、一般的な歯科治療用のフッ化ワニスを塗布した試験区と、無処理区の歯が用意されました。処置された歯は、人工唾液に浸漬され、37℃で14日間インキュベートされました。 14日後、歯の表面を走査型電子顕微鏡で観察すると、モリンガエキスのワニスで処理した歯では、無処理区およびフッ化ワニスで処理したものよりも再石灰化が進んでいました。さらに、高濃度のモリンガエキスのワニスで処理した歯のほうが再石灰化が進んでいました。表面に膜が形成されるだけでなく、亀裂や溝を埋めるほどの効果があったようです。

象牙質の顕微鏡写真。aは対照区、bcはモリンガエキス処理 区で、溝が埋まっている。
Dentinomimetics and cementomimetics of Moringa oleifera leaves extract - Scientific Reports
To evaluate the biomimetic remineralization capabilities of Moringa oleifera leaves (MOL) extract on coronal dentin and ...

再石灰化を促進したのは、モリンガエキスにミネラルが豊富だから。

歯の再石灰化はヒドロキシアパタイト結晶を再構築することです。ヒドロキシアパタイトは水酸化リン酸カルシウムであり、その名が示す通り、リン(P)とカルシウム(Ca)と水酸基で構成されています。モリンガエキスには、PとCaイオンが豊富に含まれており、再石灰化の材料を提供していると考えられます。また、モリンガエキスのシュウ酸、フラボノイドおよび様々な種類のアミノ酸の存在も重要で、再石灰化を促進し、最終的には象牙質の透過性を低下させる役割を果たしている可能性があります。さらにさらに、モリンガエキスにはプロアントシアニジンとフラボノイド(コラーゲン安定剤)の含有量が高く、これも再石灰化を促進します。コラーゲンは、再石灰化が進行する際に鉱物結晶形成の足場として機能する横縞原線維を形成しますので、この様な有機物質も再石灰化に一役買っていそうです。

セメント質の顕微鏡写真。aは対照区、bcdはモリンガエキス処理区で、細かい穴や溝が埋まっている。
Dentinomimetics and cementomimetics of Moringa oleifera leaves extract - Scientific Reports
To evaluate the biomimetic remineralization capabilities of Moringa oleifera leaves (MOL) extract on coronal dentin and ...

「モリンガエキス配合歯磨き粉」はすでにあるが、再石灰化に着目したものではない。

調べてみると、すでに「モリンガ入り歯磨き粉」は開発・販売されていました。もともとモリンガは漢方的な使い方をされていましたので、着目されていてもおかしくありません。しかし、その歯磨き粉ではモリンガの効能が「口臭対策」として記載されていました。今回紹介した論文でも、今回の結果を受けて臨床研究に進む価値があると、されています。まだまだ研究途上の技術ということですね。将来的に、モリンガ配合歯磨き粉は、知覚過敏などの対策歯磨き粉として販売されるようになるかもしれませんね。

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