スパイスエキスで処理した種子の発芽と生育が向上!

研究

種子の「プライミング」の効果

作物・穀物を栽培する際は種を撒きます。昨今の商用品種は種子が「プライミング剤」で処理されたりコーティングされていることがあります。プライミングにより発芽直後の病気を抑制し、発芽後の生育を助けます。一般的には合成した抗生物質などをプライミングに使用しますが、土壌環境への影響や持続性を考えると、ナチュラルなプライミング剤の開発が求められています。そんな中、ターメリック(ウコン)やニーム(古くから薬用に使われる樹)の葉から抽出したエキスでプライミングしたところ、発芽や生育を助けた、というインド発の研究結果が報告されました。これは確認しなくては!

Physio-biochemical responses and crop performance analysis in chickpea upon botanical priming

スパイスエキスで処理したヒヨコ豆の発芽・生育が向上!

使用されたスパイスはターメリック(ウコン)とニームです。これらのスパイスを粉末にし、水に溶解して1晩寝かせます。この寝かせたスパイスエキスにヒヨコ豆種子を浸して栽培しました。その結果、ヒヨコ豆の発芽率や成長量が既存のプライミング剤(抗生物質)で処理した種子よりも有意に増加しました。特にターメリックでの効果が大きく、発芽率は10%向上し、地上部の大きさや乾燥重も増加しています。最終的な収量も16%の増加が確認でき、スパイスエキスによるプライミングが有効であることが確認されました。

スパイスエキスはヒヨコ豆に何をした?

収量が増えることがわかったため、なぜ収量が増えたのか調査されました。その結果、スパイスエキスで処理した種子では、様々な変化が起こっていました。

①初期のアミラーゼ活性向上

アミラーゼは貯蔵しているデンプンを分解してエネルギーに変える反応のスターターを担っています。アミラーゼ活性のスタートダッシュは発芽直後の生育を促進します。

②プロテアーゼ活性向上

プロテアーゼは貯蔵タンパクからアミノ酸を合成します。アミノ酸は植物の成長に必須の成分であり、その供給が強化されたことで生育が促進されます。

③抗酸化活性の向上

発芽の過程はとてもストレスフルなので、活性酸素が発生します。過剰な活性酸素は細胞を攻撃して生育を抑制してしまいますが、抗酸化力が強化されると活性酸素を除去し健全な生育が可能です。

④フィターゼの活性向上

種子はフィチン酸を保存していますが、これはリン酸やビタミン、無機塩類の供給体として機能します。フィターゼはフィチン酸を分解する酵素で、生育に必要な成分を供給します。

他にも細かい変化はありましたが、スパイスエキスは概ね上記のような変化を種子にもたらし、種子の生育を助けていました。素晴らしい効果です。

ナチュラルなプライミング剤の開発

今回紹介されたターメリックやニームのような植物由来成分は土壌に撒いても大きな影響を及ぼしません。食用として栽培されているものであり、低コストでの製造が可能です。乾燥物を溶かして馴染ませた溶液を種に塗布するだけという簡単なプライミング処理で効果があります。

導入までのハードルは大変低いものになっています。研究ではヒヨコ豆を使っていましたが、ぜひとも他の植物でも効果を確認してみたいですね!

コメント

タイトルとURLをコピーしました