植物由来成分による抗菌性をもちつつ環境に優しいバイオポリマーコーティング布

研究

キトサンコーティング

「キチン」は天然の多糖類で、セルロースについで世界で2番目に豊富な天然バイオポリマーです。エビやカニ、一部の菌類の細胞壁の主成分で、高弾性の繊維となっています。このキチンを処理して作られるのが「キトサン」です。キトサンを用いたコーティング剤が今注目されています。キトサン自体が抗菌性を示しますし、何より天然成分由来のため、環境汚染や人への害が無いことから様々な用途に用いられています。今回紹介する研究では、キトサン+植物由来成分でコーティングすることで、さらに抗菌性を強化した布地が作成されました。生分解性も高く、環境にも優しい使い捨て布の誕生です。

Bioactive and biodegradable cotton fabrics produced via synergic effect of plant extracts and essential oils in chitosan coating system

キトサン+植物由来成分でコーティングした布の特性

研究では、キトサンに植物抽出物やエッセンシャルオイルを加えて布をコーティングしていました。その結果、抗菌機能が強化されました。大腸菌、枯草菌、黄色ブドウ球菌、カンジダアルビカンス黒色アスペルギルスに対する抗菌効果が明らかに向上しました。最も効果的な成分はアロエベラ抽出物、およびシナモンエッセンシャルオイルを含むコーティングでした。どれも日常的に親しみのある植物から取られた成分ですね。

抗菌作用があるからと行って、環境に強い影響を与えることもありません。これらの布を土壌に4週間埋設すると、分解が進んでいました。抗菌性を示しつつ、環境負荷も小さい素晴らしい繊維となりました。

ちなみに、植物由来の良い香りももれなくついてきます。

https://www.nature.com/articles/s41598-024-59105-4

医療分野での応用に期待

キトサンコーティングを布に施すことは非常に簡単です。キトサンを溶かした溶液に植物由来の成分を加えて、布を30分浸し、すすいだ後に乾燥させるだけです。これだけで抗菌性が高く、環境負荷の低い布地を作成できます。医療分野では常に清潔さが求められ、使い捨て性の抗菌剤が好まれます。今回紹介したコーティング布地はコストも低く、十分な抗菌性を示すことから、医療具として最適であるとされています。低コストで感染症を抑制できる布、どんどん普及していってほしいと思います。

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