健康食品としての藻類
クロレラ、ドナリエラ、スピルリナ、そして今回話題にするユーグレナなど、藻類のサプリメントの開発は活発で、日々新しいものが提案されています。藻類ごとに栄養素が異なるため、様々な用途を想定したサプリが供給されていますが、同じ藻類で異なる組成となる藻類は珍しく、新たな活用例を切り開くために研究が進んでいます。そんな中報告されたこの研究では、ユーグレナを「鰹出汁」と強い赤色光で培養すると、これまでユーグレナが作らなかった成分を作ることが発見されています。
ユーグレナの栄養価と新しい栄養価の可能性
食用としてのユーグレナは、ビタミン13 種、ミネラル 9 種、アミノ酸 19 種、 DHA や EPA などの不飽和脂肪酸 12 種、他にも食物繊維の一種であるパラミロンなど合わせて、全部で 59 種類もの栄養素がバランスよく含まれているそうです(Euglena Co.,Ltd.より)。粉末を固めてサプリにしたり、食品に混ぜ込むことで、食品の栄養価を強化できます。すでに栄養価が評価されているユーグレナですが、食品にされていないユーグレナ別種では、これまでとは異なる栄養成分を培養環境の違いで作り出すことが報告されていました。そこで、すでに食経験のあるユーグレナ種で、新しい栄養素を作り出す条件が検討されました。
「鰹出汁」+「赤色強光」
試験では、培地に「鰹出汁」が用いられました。鰹出汁はアミノ酸、ペプチド、イノシン酸、アルカリ性物質、微量ビタミンやミネラルが含まれており、ユーグレナの培養に十分な栄養素を含んでいました。また、試験では光の色を「赤色」に変え、強く照射しました。
その結果、ユーグレナ(Euglena gracilis)は赤色の細胞へと変化しました。もともと、ユーグレナの緑色は葉緑素ですが、この培養系では分解されていました。また、赤色の原因物質は「ジアジノキサンチン」であることが確認されました。ジアジノキサンチンは、ユーグレナではこれまで見られなかったカロテノイド色素となります。赤色化したユーグレナは、新しい機能性を示すサプリになることも想定されています。今後の研究に期待ですね。
植物や藻類での物質生産の物理的改良に期待
人類が活用する成分の中には、化学的な合成が難しく、植物や藻類のような微生物が効率的に合成してくれる成分はたくさんあります。また、現代においては遺伝子組換えを用いることで、さらに効率的な物質生産が可能となっています。一方、今回の研究例では、培養環境や条件を変更することで新しい成分を藻類に作らせることが可能と判明しました。遺伝子組換えを経ないことから、研究開発期間が短縮され、上市までのスピードが格段に上がります。今後、同様のスキームで作られる成分が今後も増えそうです。物質生産の新たな選択肢が増えたことで、ビジネスチャンスも広がりますね。ユーグレナを始め、葉緑体生物の可能性はまだまだ埋もれていそうです。
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