「物理」が自然を回復しているのです。

研究

自然の回復力の源は?

荒廃した土地が緑を取り戻すとき、ただ植物が増えているだけだと思っていませんか。どこからともなく植物の種が運ばれてきて、発芽して、土壌を覆う…だけではないのです。植物が再び広がった土地は、まず「物理的な自然現象」が働いて、植物の着生を助けていました。

乾燥した土壌に現れるヒビ割れ

乾燥した畑や田んぼ、水が不足した街路樹の根本などで、ひび割れた地面を見たことはありませんか?あの現象、典型的な自然回復システムの1つなのです。

乾燥により発生する地面の亀裂は、種子を捕捉することで植物の流出を抑えます。亀裂により僅かな雨も深く土に浸透させることができ、表面からの蒸発を抑えて水を保持できます。その結果、完全な乾燥状態になるまでの時間を稼ぎ、時折得られる僅かな水を最大限活用して亀裂に補足した種子を育てます。その結果、亀裂に沿うように植物が生育します。植物の根で区画化された土は、水と土の流出を防ぎ、さらに植物を育てられる土地へと変化します。とても良くできたテラフォーミングシステムです。

Self-organized mud cracking amplifies the resilience of an iconic “Red Beach” salt marsh

From: https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abq3520

半円形のくぼみがもたらす自然回復効果

アフリカでは半円形の堤防を作ることで、自然回復に成功しています。これは人為的な例ですが、物理的な作用が自然回復をスタートさせている良い例です。

タンザニアでは、爆発的な人口増加に対応するため、森を切り開き作物を作る土地を確保してきました。しかし、土質のためか土地は段々と痩せ、一度痩せた土は水を保持できずに不毛の土地となってしまっていました。自然が広がっていたときは、植物が地面を覆うことで水の蒸発や流出を防いでいましたが、1度開かれた土地に植物が戻ってくることはありませんでした。

しかし、半円形の堤防「demi-lune」を作ることで、数年かけて自然が戻ってきました。デミルーンは傾斜に沿って設置されます。まずは穴を掘り、掘り出した土で、傾斜の下側に半円の堤防を築き、下り落ちる水をキャッチできるようにします。この構造により、水が堤防内にとどまり浸透することで、下層土に大量の水分が保持されます。土壌が流れてしまうこともついでに阻止します。その結果、植物が生育するのに十分な水が確保され、半円の周りに植物が生育し始めます。その後、植物の生息圏が少しずつ広がり、数年かけてデミルーン周辺を緑化することが可能です。

Justdiggit

From: Lead Foundation Tanzania@leadtz

自然という大きな物理現象の中で生きる植物

植物は発芽した場所から動くことはありません。そのため、天候や土壌などの物理特性に大きな影響を受けます。一方で、その特性を活用することで、乾燥を乗り越え、仲間を増やし、自分の住みよい環境へと作り変えていきます。アフリカの例のように1度植物が絶えてしまうと、元に戻すことは大変です。ですが、物理的な自然作用は再び植物の生育できる環境を取り戻すようにできている様に見えます。

私達が少し手を貸すだけで、自然は回復することが可能のようですので、取り返しがつかなくなる前に対策していきたいですね。

From: Google map

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