ジャポニカ米の窒素利用効率(NUE)を高める方法として、2025年の Nature Communications 研究はかなり実装に近い結果を示しました。
インディカ由来の OsNLP4 allele をエリートジャポニカ品種Xiushui134(XS134)の遺伝背景へ導入したnear-isogenic lineを作り、中国の複数地域・複数窒素条件で圃場試験したところ、収量とNUEが12〜26%程度向上しました。
これは単なる培養皿や苗の遺伝子発現研究ではありません。ただし、すぐ日本の主要品種へ同じ数字が出ることを保証するものでもありません。
OsNLP4は窒素応答遺伝子をまとめて制御する転写因子
OsNLP4はNIN-LIKE PROTEIN familyの転写因子で、nitrate-responsive element(NRE)へ結合し、窒素輸送・同化、鉄恒常性などに関わる遺伝子を制御します。
研究ではindicaとjaponicaのOsNLP4 coding regionに3つの主要missense SNPを含むhaplotype差が見つかり、indica型はNREへの結合が強いことが示されました。
Hefeiでは平均25%増収

indica 9311由来のOsNLP4領域をXS134へ導入した近同質遺伝子系統(NIL)では、15N-nitrate/15N-ammoniumの取り込みと全窒素量が増加しました。
Hefeiの圃場では分げつ数・一穂粒数が増え、収量は平均約25%増加しました。
Changxingでは低・標準・高Nすべてで20〜26%増
Changxingでは低N(90 kg urea/ha)、標準N(180 kg/ha)、高N(360 kg/ha)を比較し、NILのplot yieldはXS134よりそれぞれ21.1%、25.8%、20.1%高く、NUEも同程度改善しました。
つまり「肥料を多くしたときだけ効く」alleleではなく、少肥〜高施肥の複数条件で優位性が再現されています。
Hainanの大規模圃場でも12.5〜15.7%増
Lingshui, Hainanでは66 m² plot、1replicate約1700個体の大規模試験が行われ、低Nで12.5%、慣行高Nで15.7%の増収が確認されました。論文は複数の独立したlarge-scale field experimentで同様の傾向を再現したとしています。
この段階まで来ているため、OsNLP4は“将来使えるかもしれない遺伝子”より一歩進み、特定ジャポニカ背景で圃場効果を示した育種alleleと呼べます。
3つのアミノ酸差がNRE結合を強める
MSTではindica型OsNLP4のNREへの解離定数Kdが約1.099 µM、japonica型は約3.135 µMで、indica型の方が強く結合しました。下流のOsNRT1.1B、OsNR2やFe代謝遺伝子の発現も強くなります。
つまり単なる発現量差ではなく、タンパク質配列の自然変異が転写因子のDNA結合能を変えています。
N×Fe 30〜32%は「鉄を撒けばもっと増える」という処方ではない
論文ではOsNLP4indicaとbalanced nitrogen–iron条件の組み合わせでNUEがさらに向上する結果があります。ただし土壌のFe availabilityはpH、水管理、土壌型で大きく変わり、特定試験条件の結果を一般圃場の施肥レシピへ直結させるべきではありません。
次は日本品種・日本圃場でのG×E

XS134は長江流域で栽培されるエリートジャポニカですが、日本の主力品種とは遺伝背景も栽培体系も異なります。実用品種化には、日本型品種へのintrogression/base editing、食味・品質、倒伏、成熟、病害抵抗性、地域別G×Eを確認する必要があります。
それでも、自然alleleを交配で導入でき、多地点圃場で収量とNUEを同時に上げたことは大きい成果です。
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参考文献
- Wu J et al. Nature variations of OsNLP4 responsible for nitrogen use efficiency divergence in the two rice subspecies. Nature Communications. 2025;16:7681. https://doi.org/10.1038/s41467-025-63109-7
- Hu B et al. Variation in NRT1.1B contributes to nitrate-use divergence between rice subspecies. Nature Genetics. 2015. https://doi.org/10.1038/ng.3337


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