ユーカリの葉から金が見つかった――という話は、聞き方によっては“植物から金を採れる”研究に見えます。しかし2013年の Nature Communications 論文が示した中心的な意味は、ユーカリを使って地下に隠れた金鉱床を探す biogeochemical exploration です。
研究対象となった西オーストラリアのFreddo Gold Prospectでは、金鉱床は地表から約30 mの堆積物の下に隠れていました。そこで研究チームは、鉱床上に生えるユーカリの葉・枝・樹皮・落葉・土壌を分析し、植物体内に本当に金が取り込まれているのかを調べました。
約30 m下の鉱床とユーカリの深い根系

Freddoでは金鉱床を覆う堆積層が約30 mあり、地表から鉱石は見えません。ユーカリは乾燥地で深く広い根系を発達させ、文献上は Eucalyptus marginata のsinker rootが40 m深まで達した例もあります。
ただし、「調べた各ユーカリの根が必ず金鉱床まで40 m伸びていた」と直接確認したわけではありません。研究が示したのは、深い根系・地下水・地球化学的移動を含む系の中で、地下の金が植物へ取り込まれ得るということです。
葉の金濃度は鉱床直上で高かった

Freddoの大型ユーカリでは、乾燥葉中の金濃度は最大80 ppb、枝では44 ppbでした。植物材料の背景値は約0.1 ppbとされ、鉱床直上の葉や枝で明瞭な異常値が観察されました。
一方、個々の葉では金濃度のばらつきも大きく、葉片ごとの測定では数値が大きく変動しました。したがって、1枚の葉を測れば地下の鉱床位置が即座に分かるという単純なセンサーではありません。
金粒子は葉の内部に実在した
研究の重要な点は、葉表面に付着した砂塵ではなく、生きた植物組織の内部に自然由来の金粒子を直接観察したことです。シンクロトロンX線蛍光顕微鏡で、最大約8 µmの金粒子が葉内部に確認されました。
一部の金粒子はシュウ酸カルシウム結晶に付随していました。金は植物に有害である可能性があり、葉などの末端組織へ移動させたり、細胞内で区画化したりすることが毒性回避に関係すると考察されています。ただし、シュウ酸カルシウムへの結合が“金専用の解毒機構”として証明されたわけではありません。
これはphytominingとは違う
葉に金が入るなら、その葉から金を回収できるのでは――と考えたくなります。しかし自然条件での濃度はppbレベルです。この研究は植物体から商業的に金を採取する技術を示したものではありません。
価値があるのは、厚い堆積物に覆われた地域で、植物を地下地球化学の間接指標として使える可能性です。ボーリング候補地を絞る補助情報としては意味がありますが、地質・植生・気候・採取方法ごとの校正が必要です。
2018年のPublisher Correctionは科学結論を変えていない
この論文には2018年にPublisher Correctionが出ていますが、修正内容はHTML版の記事番号が2274と誤記されていたものを2614へ直したものです。実験結果や科学的結論への訂正ではありません。
「金のなる木」という表現は面白いですが、より正確には、ユーカリは地下の金を微量に反映する生物地球化学センサー候補です。植物を掘るのではなく、植物を読むことで地下を見る研究です。
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参考文献
- Lintern M et al. Natural gold particles in Eucalyptus leaves and their relevance to exploration for buried gold deposits. Nature Communications. 2013;4:2614. https://doi.org/10.1038/ncomms3614
- Publisher Correction. Nature Communications. 2018. https://www.nature.com/articles/ncomms16199



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