お茶から稲のための薬を作る。

研究

ナチュラル農薬のススメ

作物を作るために、農薬は欠かせません。有機農業をしたことがある人なら、その大変さはよくご存知でしょう。十分な収量を得るために、そして省力化のために農薬の存在は現代農業において必須です。とはいえ、できるだけ自然物由来の防除法があるなら、農家も使いたいし、消費者も望むもの。そんなニーズに答える興味深い例が紹介されていました。

Green synthesis of chitosan nanoparticles using tea extract and its antimicrobial activity against economically important phytopathogens of rice

お茶から作ったナノ粒子成分

市場で買ってきたお茶を煮出し、室温まで冷まします。そこから水分を蒸発させて濃縮します。さらにそこから、なんやらかんやらすると(化学的手法)、お茶由来の多糖類を得ることができます。これにキトサンを添加すると乳白色になります。これが「キトサンナノ粒子(CTNp)」です。この乳白色は水と分けられるので、沈殿を回収して凍結乾燥したものが完成品です。

イネの病原菌の増殖を抑えたCTNp

合成されたCTNpが本当にイネの病気に効くのか調査されました。イネの病原菌である、Pyricularia grisea(いもち病の病原菌)、Xanthomonas oryzae(白葉枯病の病原菌)を薄く塗り拡げた培地に、CTNpを含ませたろ紙を置きました。37℃で24時間培養すると、CNTpが無い培地ではびっしり増えましたが、CNTpのろ紙を置いた培地では、ろ紙の周りだけ菌が増えていませんでした。CNTpが病原菌の増殖を抑えました!

また、イネの葉っぱでも効果を確認しています。葉を採取して、きれいに洗います。そこにCNTpを塗りました。対照区は水を塗っています。更にそこに病原菌を塗って、10~14日間放置しました。その結果、水を塗った葉は黄色く病状を示しましたが、CNTpを塗った葉っぱ緑を維持していました。病原菌の葉への感染を抑えられることができています。

https://www.nature.com/articles/s41598-024-58066-y

コスト、効果の持続性次第で使えるナチュラル農薬へ。

今回紹介した研究は実験室レベルの抗菌作用です。葉を使った試験が行われているので、圃場の植物でも機能する可能性を示唆していますね。実際に圃場での試験を実施して、使えることを証明してほしいです。

論文中に言及はされていませんが、これ、出涸らしのお茶でも良いんですかね?3時間ほどグラグラと煮出したお茶が使われていて、出涸らしのお茶でも十分多糖類は取れるのではないかと思いました。食品残渣から作れたら低コストでビジネスとして成り立ちませんかね?

ほとんどが自然物のため、農薬としての認可のハードルも無い or 低いのでは無いでしょうか。

みなさんの意見もお聞かせください。

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