植物の生育を制御する「植物ホルモン」は微生物を介して供給できる。

研究

植物の生育を制御する因子は様々あります。外的な環境からの気温や光、湿度などといった物理的な因子に加え、植物体内における制御因子も様々研究されています。植物バイオテクノロジー分野に置いて、「組織培養」の技術は必須であり、主に「植物ホルモン」の濃度や組成によるカルス誘導や再分化誘導を行っています。

組織培養の技術は研究だけでなく、無菌苗生産などの分野でも活用され、無くてはならないものです。植物ホルモンの正体はオーキシンやサイトカイニンという総称で呼ばれる化学物質です。オーキシンだけ見ても、インドール酢酸(IAA)やナフタレン酢酸(NAA)、インドール‐3‐酪酸(IBA)など様々な種類があり、植物ごとに感受性が異なります。またこれらの化合物の違いは「天然物」か「人口合成物」の違いもあり、個人的な感想としては人口合成物のほうが少量で効きくイメージを持っていますが、植物種に拠る部分も大きいです。少量で効くため、逆に大量の植物ホルモンは植物の生育を撹乱するため、除草剤として使われるほどです。

さて、この植物ホルモンですが、畑にバカバカとまいて収量を得るようなものではありません。植物ホルモンのバランスは絶妙で、植物は奇跡的なバランスで生育を行っています。それでも、微量の植物ホルモン添加は、収量や作物のクオリティに影響するため、適度な使用が望ましいと考えられます。特に「必要量の天然物」植物ホルモンであれば、生態系の撹乱も少なく、持続的な使用が可能かもしれません。

では、どこからその植物ホルモンを持ってくるか。1つのルートは「微生物」です。植物ホルモン自体が植物と微生物の相互作用に関与していることは、割と昔から知られていましたが、近年になり細菌が植物ホルモンの合成経路自体、または合成に不可欠な遺伝子を持つことがわかってきました。これらの遺伝子は、本来植物との相互作用で発現し、植物の生育・細菌類の生育を助けるものではありますが、条件が整えば細菌から植物ホルモンを植物に提供し、生育を助けることが可能となります。

植物と共生する微生物は、根圏の土壌微生物か植物内生菌として存在しています。これらの微生物の種類や活性の制御により、植物の生育を助けることも可能かもしれません。このような技術は、環境への負荷が小さく、持続的な農業に向いていると思います。また、土壌菌であれば1作が終わったあと土に残り、次作の植物の生育を助けることも可能かもしれませんね。流石に期待しすぎですが、省力化・持続性が求められる農業界隈において、力を入れて研究する価値のある分野だと思います。

参考文献:Bacterial indole-3-acetic acid: A key regulator for plant growth, plant-microbe interactions, and agricultural adaptive resilience

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