建築資材を植物由来に置き換えて、断熱性を上げつつCO2排出を抑える

研究
建築分野はCO2削減余地を残す分野

様々な建物の建設・建築に携わる業界は、世界の最終エネルギー消費の30%、世界のエネルギー関連排出量の26%を占めています。建築に使用される素材も日々開発が進んでいますが、まだまだ開発の余地を残しており、CO2排出削減などに寄与できるポテンシャルがあるそうです。化学物質ベースの複合素材の機能性も年々高まっていますが、一方で天然物由来の素材の検証は不十分なようで、良い素材がこれからたくさん見つかる可能性もあるようです。建設コストだけでなく、地球環境へのコストを考慮した素材づくりが建築業界の要点になりそうです。

セメント(コンクリートやモルタル)の代わりに「灰」と「砂」

具体的にどのような素材開発が可能でしょうか。私たちの生活に欠かせない構造材としては、セメントがありますね。セメントはコンクリートやモルタルに加工されて構造物を作っています。セメントを構成する要素は大まかに「クリンカ」と「石膏」です。クリンカは石灰石と粘土を混ぜて焼いたものですので、大まかに言うとセメントは「石灰石+粘土+石膏」ということになります。このセメントの置き換えとして考えられているのが、「フライアッシュ」と「砂」です。フライアッシュは石炭火力発電所で発生する石炭灰の細かいものです。フライアッシュは廃棄物でありながら、セメントと似たような性質を示し、砂などの骨材を混ぜて高めることでセメントと同じように使用可能なようです。これまで捨てていた物なのでコストも低く、有効活用できて一石二鳥ですね。

断熱作用のある植物由来の天然素材

人が生活する環境を作る建物に使用する建材は断熱性が欠かせません。化学物質としては、発泡ウレタンなどが断熱材として使われていますが、これを天然素材に置き換えることを考えます。候補となるのは植物由来の「繊維質」です。例えばココナッツ繊維や麻繊維です。また、これらの繊維をどのように使うかも重要です。ただ単に積層するだけの場合や、糸状にして織ったり、フェルトのように積層したりなど、様々な使い方が想定できます。手間が増える方法は当然断熱性を持たせることもできますが、コストと求める性能のバランスを考えながら選ぶことで、天然由来成分でも必要十分な断熱性が得られるようです。植物由来であれば、「素材を作る」ことからCO2を削減可能です。「CO2を固定して作った家」なんていかがでしょう。

新素材が開発中!

現在も研究が進む建築業界、植物由来でしかも廃棄物の可能性が研究されています。

  • コーヒーかす モルタルに重量比で5%加えるだけで断熱性が58%向上し、熱拡散率が34%低下。
  • 茶かす 重量比で2.5%を添加すると、軽量コンクリートの構造要件(>3.5 MPa)を満たして壁構造に使用できます。一方、重量比で7.5%加えると断熱性が上がるため、断熱材として使用できます。
  • オリーブ搾りかす 複合材の熱伝導率が55%低下し、圧縮強度が81.7%向上します。
  • わら材 重量比4%のわらを漆喰に混ぜ込むと、熱伝導率が68%低下します。

圧倒的な能力値の上昇ですね!これらは廃棄されていたり、余っている植物由来材なので、コストも低いため、新規素材として期待が持てます。

温暖化を食い止めるためには、2050年までにCO2の排出量をプラスマイナスゼロにする必要があり、そのためには2030年までに建築部門のCO2排出量を毎年4%削減する必要があります。今回紹介したような素材が広まれば、排出量低減に大きく貢献するでしょう!

引用文献:https://www.nature.com/articles/s41598-024-63442-9

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