動けないし話せない植物は香りで情報共有する。
皆さんご存知のように、植物は動けません。葉擦れの音はすれど、話すことはできません。しかし、確かに植物は植物とコミュニケーションを取っています。例えば、香りのような揮発性物質を放出して、近くの植物に情報共有を行います。風に乗せた香りが、ある植物から違う植物に情報が共有されるのです。
危険時、いつも放出している揮発性物質の組成が変わる。
基本的に、植物は揮発性物質を常に放出しています。例えば、ローズマリーの近くではローズマリー特有の肉に合うスパイシーな香りを感じますよね。ハーブやお花の香りは植物の放出する揮発性物質の一部です。平常時には、植物は自分のために香りを放出します。例えば良い香りを出して虫を誘引し、受粉効率を高めたり。防虫作用のある成分を放出して虫を寄せ付けなくなったり。
ときには、虫の食害や病気の影響で枝葉がダメージを受けることがありますが、そういうときは放出する揮発性物質の内容が変わります。そして、その揮発性物質の違いは、香りを感受したダメージを受けていない植物のストレス耐性や回復力を高めるのです。
つまり植物は、ダメージを受けた際に、周りの植物に「お前も同じ目に合うかもしれないから覚悟しろ」と言っているのです。もしかしたら「悲鳴」を上げて、知らせているのかもしれません。
Plant–plant communication in Camellia japonica and C. rusticana via volatiles
「植物の悲鳴を使って、他の植物を強くする」農業
先に上げたような、伝達に寄与している揮発性物質はまだ特定されていませんし、複数の化合物の可能性もあります。これからの研究に期待します。この物質が特定できれば、病気や虫害に対して、事前に「覚悟」させることで、被害を抑える事ができるかもしれません。また、植物由来の物質であるため、食糧に対して用いるハードルも低いと思います。散布するのは揮発性物質であるため、ハウス内の閉じた環境で効果を発揮するのか、外でも機能するのか、実際に使用する際のポイントなど研究が進めばわかってくるのではないでしょうか。
将来、植物の防虫や病気の抑制には「液体」の農薬散布だけではなく、「ガス状」成分を散布するような作業が一般的になるのかもしれませんね。
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