同じカタバミなのに葉が「緑」と「赤」の2種類あるのは生きるために進化した結果でした。

研究

雑草代表:カタバミ

カタバミ(Oxalis corniculata L.)は日本でも自生する雑草です。維管束植物種の中でも、世界で3番目に分布地が多いワールドワイドな植物です。とても旺盛な雑草で、農地に生えると、根が太く深く張るため、根絶に苦労する雑草でもあります。その旺盛な性質から森林や平原だけでなく、都市部でも見られます。

様々なところで見られるカタバミですが、見られる場所で葉の「色」が違うことに気づいているでしょうか。森林や平原など自然豊かな場所では「緑」の葉をつけたカタバミが見られ、都市部の街路樹脇やアスファルトの隙間などでは「赤」(赤紫)の葉をつけたカタバミが見られます。

なんとこの棲み分けは、カタバミの生存戦略なのです。

From green to red: Urban heat stress drives leaf color evolution

From: https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abq3542

赤葉のカタバミはストレス環境下での生育が得意

野外観察の結果、赤色の葉を持つカタバミが主に生育しているのは、都市部でした。都市部の中で様々な場所で生育しています。アスファルトの隙間や地面のブロックの間など。この様な場所は、熱がこもりやすく、植物にとって生育しにくい場所ですが、赤葉のカタバミは元気に育っています。一方、この様な場所で緑葉のカタバミは見られません。これは、赤葉のカタバミが緑葉のカタバミより熱ストレスに強いことが理由です。都市部のカタバミの赤色は、アントシアニンなどの色素が蓄積した結果ですが、この様な色素は抗酸化作用があり、ストレス下で発生した活性酸素を除去します。また、葉の透過率を下げるため、高木など遮るもののない都市部では、強すぎる太陽光を減衰させる機能を果たしていると考えられます。この様な特性から、赤葉のカタバミは都市部で専有することができているのです。

緑葉のカタバミは、非ストレス環境だと赤葉カタバミより生育が良い

赤葉のカタバミがストレス環境下での生育で優位だということはわかりました。そうなると、世界中が赤葉のカタバミで埋め尽くされそうですが、そうはなりません。森林や平原など、自然環境に近い低ストレス環境下では、赤葉のカタバミより緑葉のカタバミのほうが生育が優位なのです。これは、カタバミが匍匐性の植物であり、他の植物よりも低い位置で光を受ける特性が影響していそうです。自然環境下ではカタバミよりも大きい植物が周りにたくさん生育しているため、適度に光が遮られ、カタバミが欲しい量の光が届けられます。適度な光は低ストレスのため、活性酸素が作られることもないので、余計なエネルギーを使ってアントシアニンなどの対策物質を作らなくても生育できます。その分、生育が良くなるという寸法です。

都市部に最適進化した赤葉のカタバミ

「都市部」というのは、人類が作り出した新しい環境です。自然界に同様の環境はほぼありません。人間が住みやすくするために改良した結果、ときに人間すら不快に感じる環境を作り出してしまいました。例えばヒートアイランドとか。そんな場所でも植物は世代を繰り返すことで進化しています。赤葉のカタバミは都市部において最も進化した種の1つと言っても過言ではないかもしれません。

近年、カタバミのように人類が作り出した環境に適応した植物が研究されています。今後深刻になるかもしれない地球温暖化に向けて、共存できる植物種を見つけることは、様々な問題を解決するうえで重要になるでしょう。

足元の隣人はすごい速度で進化しています。目を向けてみると新しい発見がゴロゴロと転がっているかもしれませんね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました