紅葉の美しいこの季節。気温が低くなって、夜露と共に肌寒さを感じる日が増えてきましたね。このような寒さの中、私たちは暖房をつけたり、暖かい服を着て保温しますが、植物たちはなぜ凍ってしまわないのでしょうか。
今回の記事は北海道大学の学位論文を参考にしています。
まず、水が0度で凍るという認識を変える
私たちの一般的な認識として、水は0度で凍ると思われがちですが、実はそれは必ずしも正確ではありません。過冷却という現象があり、純粋に安定した水は0度でも凍りません。実際、安定な状態を保てれば、水は-40度まで下がっても凍りません。ただし、水が接触する物体や容器の影響で不均質核生成という現象が起き、水が凍り始めます。これが一般的に自然界で凍結が起きる際の現象です。
植物が凍らない理由
植物が凍結しない理由は、氷核活性を抑える「氷核形成阻害物質」を持っているからです。この発見は1980年代になってからで、その後の研究で様々な物質やメカニズムが確認されてきました。例を挙げると、
- 不凍化タンパク質
- ペプチド(タンパクよりも小さいアミノ酸の塊)
- 界面活性剤
- フェニルプロパノイド(オイゲノール、クロロゲン酸など)
- テルペノイド(リモネン、ヒノキチオールなど)
- プリン塩基物質(カフェイン、キサンチンなど)
- フラボノイド(ケルセチン類、ケンフェロール類、カテキン類など)
- タンニン類
これらの物質の作用によって、植物は厳しい寒さでも生き延びることができます。
しかし、すべての植物が凍結しないわけではない
植物も万能ではありません。どれだけ耐寒性があっても、過ぎた寒さの下では凍結してしまいます。特に農産物にとって、霜害は収量を大きく左右する要因となります。また、興味深いことに、植物の表面に存在する氷核細菌(例: PseudomonasやErwinia)が霜害の原因の一つとして知られているそうです。菌でさえも凍結の要因になりえるようです。この様に、植物の寒さ対策は多岐にわたり、物理的な作用だけでなく、菌のような生物的な影響も受けて引き起こされていました。ほんとうに複雑なシステムで成り立っているなと感じます。
身近に耐寒性の高い植物を
この季節、外出時に室内のエアコンが停止してしまい、帰宅後に植物が枯れてしまった…なんてこともあります。しかし、植物体はしたたかで、生き残った組織から復活する場合もあります。そんなときは、上のような耐性メカニズムが機能して生き残ったと考えると、植物が健気に見えると思います。もちろん、寒い冬に外に生きる雑草も頑張っているのですが笑。耐寒性が高い観葉植物をピックアップしてみました。部屋に置く際はこれらの植物を選ぶことで、そのようなトラブルを避けることができます。寒さに負けない植物から元気をもらってくださいね。
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