種の拡散のために発達した「翼果」
「翼果」をご存知ですか?身近な例として「もみじ」はプロペラ状の果皮に種子がついています。切り離された種子はクルクルと回りながら滞空し、風があれば風に乗り遠くへ運ばれます。他にも「ジャワキュウリの種」はグライダーのような形をしており、グライダーのように風に乗り滑空しながら遠くへと移動します。着いた先が発芽に適していれば新たな芽を出し、より快適な場所を求め種の生存圏を拡大していきます。このように、一部の植物は果皮を変化させ、種の拡散に適した「翼果」という形に発達しています。
翼果を生物模倣
この特徴的な構造である「翼果」を模倣して、さらに新しい機能をつけてハックしてしまった研究が報告されています。
Photochemically responsive polymer films enable tunable gliding flights
この研究では「カエデ」の翼果の構造を、光反応性のポリマーフィルムで再現して人工のカエデ種子を作成しました。人工種子のポリマーフィルムは薄く、カエデの翼果と同じ形にして、翼果から取った種子をつけるとほぼ同じ重さで翼果を再現できました。さらに興味深い特徴として、翼果の模倣に使用したポリマーフィルムは「光反応性」があり、光を当てることで構造を変化させることができる物質なのです。光反応性はどのような変化を人工種子にもたらすのでしょう?
紫外線を当てると滑空時間が伸びた
翼果を再現したポリマーフィルムは、紫外線を当てることで変形します。紫外線照射を人工種子に行うと、模倣した翼果の形が変化し、人工のカエデ種子は飛行特性が変化しました。天然のカエデ種子の落下速度は秒速72.1cmであったのに対し、人工種子は秒速98.4cmと少し速い落下速度を示しました。しかし、人工種子に紫外線を当てて変形させると、落下速度は秒速88.2cmと遅くなりました!天然のカエデ種子の落下速度に近づきました。そして、この結果は光照射により落下速度、滞空時間を制御することが可能であると示しています。
何に応用できるか考えてみた
研究の大きな目的は、軽量な飛行ロボットの開発に適した技術開発です。しかし、光で制御するというのはユニークで、他にも応用例が考えられそうです。
例えば超小型センサーや薬剤散布の範囲を制御することが考えられます。散布物の飛距離は紫外線を照射する時間で調節できそうです。また、昼と夜で飛行特性を変えたロボットが作成可能です。さらに、レーザー技術が進歩しているので、ピンポイントで光反応構造を捉え、飛行しながら特性を変えるなどもできそうです。
アイディア次第で、色々な構造体を実現できそうです。みなさんも考えてみてください!
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