植物中のナトリウム量が虫の「共食い」を制御していた。カニバリズムのトリガー。

研究

興味深い発見: ナトリウムの重要性と昆虫行動

ナトリウムと聞くと何を想像しますか?高血圧を連想させ塩分控えめの商品が店に多いことからわかるように、ナトリウムは地球上の多くの生物にとって重要な栄養素です。一方で、植物にとっては実は必須ではありません。動物や分解者には不可欠な栄養素であり、特に昆虫において重要な役割を果たしています。こんかい紹介する研究では、ヒマワリの組織中のナトリウム濃度を水耕栽培で操作し、そこで生育するチョウセンアサギマダラの幼虫の行動への影響を調査しました。興味深いことに、ナトリウム濃度が低いと、幼虫が「共食い」行動を示すことが観察されたのです。この現象は、ナトリウム不足が生態系内での昆虫の行動に深刻な影響を与える可能性を示唆しています。

Low sodium availability in hydroponically manipulated host plants promotes cannibalism in a lepidopteran herbivore

試験の方法:水耕栽培で植物に与えるナトリウム濃度を調整した。

この論文の研究者たちは、ヒマワリのナトリウム濃度を水耕栽培で制御しました。具体的には、ナトリウム濃度を異なる4つのレベル(無添加、低、中、高)に設定し、それぞれの植物を使ってチョウセンアサギマダラの幼虫を飼育しました。この試験設計により、自然界で昆虫が経験するであろう食物中のナトリウム濃度の変動を模倣し、その影響を観察しました。

自然環境および実験室環境におけるChlosyne laciniaの幼虫
https://www.nature.com/articles/s41598-023-48000-z

ナトリウム不足と共食い行動の関連性が見えてきた。

試験の結果、ナトリウム濃度が低い植物で飼育された幼虫は、高ナトリウム濃度の植物で飼育された幼虫と比較して、「共食い」行動の頻度が著しく高いことが明らかになりました。これはナトリウム不足が幼虫の行動に大きな影響を及ぼすことを示しています。また、ナトリウム濃度が極端に高い場合には、他の原因による死亡率が上昇することも観察されました。これらの結果は、餌である植物中のナトリウムの供給が昆虫の行動に直接的な影響を与える可能性があることを示唆しています。生態学的にも進化生物学的にも重要な発見です。さらに、ナトリウム濃度が適切でないと昆虫の死亡率にも影響を及ぼすことが示されました。これらの結果は、動植物相互作用や生態系の健全性を理解する上で非常に重要です。

まとめ: ナトリウムと昆虫行動の複雑な関係

ナトリウムが昆虫の行動と生態系内での役割において重要な要素であることを確認しました。特に、ナトリウム不足はチョウセンアサギマダラの幼虫において共食い行動を引き起こす要因となることが示されました。自然界では様々な自然条件で植物内のナトリウム量が変化することは容易に想像できます。海沿いなら嵐で巻き上げられた海水の影響もあるでしょう。塩濃度の高い構成のある地域はもとからナトリウム濃度が高いでしょう。今回紹介した論文の発見は、自然界がいかに微妙なバランスで成り立っているのかを表現している様で、動植物相互作用の理解を深めるものでした。ナトリウムと昆虫行動の関連性に関するこの研究は、生態系の健全性を保つための管理戦略を考える際の重要な指針となるでしょう。外で虫を見つけたら今回のことを思い出して周りを観察して見ください。

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