バラの花弁が大きくなるか小さくなるかは、単純に“細胞が大きいか”だけでは決まりません。2023年の Nature Communications 研究は、花弁が若い時期に細胞分裂をどれだけ長く続けるかを、miR159とサイトカイニン分解酵素RhCKX6が調節する仕組みを示しました。
miR159が少ないと、花弁は小さくなった

miR159は約21塩基のmicroRNAで、標的mRNAを切断するなどして遺伝子発現を調節します。研究ではTRVを使ったshort tandem target mimic(STTM)でmiR159量を低下させると、花弁の細胞分裂期間が短くなり、最終的な花弁面積も小さくなりました。
この変化は主に細胞数の減少で説明され、細胞伸長期そのものが大きく短縮したわけではありません。
標的はサイトカイニン分解酵素RhCKX6
研究チームはRhCKX6 mRNAにmiR159の結合・切断部位を同定しました。miR159が減るとRhCKX6 transcriptが増え、活性型サイトカイニンのiPやtrans-zeatinが早く減少します。
逆にRhCKX6をsilencingすると活性型サイトカイニンが蓄積し、細胞分裂期間が延び、花弁は大きくなりました。6-BAを外から与えた実験でも、細胞分裂期間の延長と花弁拡大が確認されています。
MYB73だけではなくTPL/HDA19複合体が上流を制御する
旧記事ではMYB73がmiR159を制御すると単純化していました。より正確には、RhMYB73はTOPLESS(TPL)とHistone Deacetylase19(HDA19)を含む抑制複合体としてMIR159 promoterのクロマチン状態を調節します。
この複合体がH3K9 acetylationを低下させることでMIR159発現を抑え、結果としてRhCKX6、サイトカイニン量、細胞分裂期間へつながります。
MYB73/TPL/HDA19 → miR159 → RhCKX6 → cytokinin clearance → cell division duration → petal size
という多段階の制御系です。
「この遺伝子を変えれば大輪バラが作れる」はまだ先
研究では一過的なTRV silencingやoverexpression、ホルモン処理を使って因果関係を検証しています。実用品種を長期栽培し、花数、花持ち、花形、香り、ストレス耐性などを含めて育種価値を検証した試験ではありません。
RhCKX6は花弁の脱水耐性や老化にも関係することが報告されており、単純にCKX6を下げれば“良い大輪品種”になるとは限りません。
この研究の価値は、大輪化のレシピを完成させたことより、花弁サイズを細胞分裂時間とサイトカイニン代謝へつなぐ分子回路を実証した点にあります。
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参考文献
- Jing W et al. Petal size is controlled by the MYB73/TPL/HDA19-miR159-CKX6 module regulating cytokinin catabolism in Rosa hybrida. Nature Communications. 2023;14:7106. https://doi.org/10.1038/s41467-023-42914-y


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